小林真一の作品を読むブログ きらめく星座社★

こんにちは。 神戸から生まれた出版社、『きらめく星座社』です。 私たちが送りだす、小林真一・著の作品を、少しずつご紹介していきます。

【アルプスの小川】

 アルプス


そんなある日のこと。午後四時に
打ち合わせが終了し、先方からの
提案があった。
「この近くにドナウを見下ろす古城を
改装したレストランがある。そこへ
ご招待したいがご都合はいかが」
実は我々は朝から何も食べていなくて
腹ペコだった。
打ち合わせは現地工場で九時から
行われる。ベオグラードのホテルを
七時四十分には出発しなければ。
ところがホテルの朝食は八時からしか
始まらない。
てな訳で全員朝飯抜きで出発している。
工場で出るものは、トルコ風の濃い
コーヒーと水だけ。
昼食も摂らず午後四時まで延々とやる
のがユーゴの流儀。
そんな時の「ご接待」のプロポーサル。
日本連合から喝采があがった。
レストランまでは近かった。なるほど
良い眺めである。だけど内部の食卓の
上の方が、もっと眺めが魅力的だった。
真っ白なテーブルクロス。銀色のナイフや
フォーク。四重奏団がクラシック曲を
奏ではじめた。
「さあ、食える」日本連合メンバー十数名は
判っていなかった。
部屋の片隅で、食前酒のセレモニーが
始まった。
「今回の国際入札で、貴国に素晴らしく
近代的な製鉄所が生まれることを祝して
乾杯」とボク。
「今回の国際入札に日本連合が
勝利することを祈って乾杯」
ここまでは良い。あとがイケナイ。
カンパイの理由はいくらでも有るし、
無くなったら作れば良い。
ユーゴ人たちは腹ペコではなく、
コニャックと称する地場産の
ブランデーを、より沢山飲みたいから、
何回も乾杯を繰り返したいのだ。
気がつくと、すでに数名の日本軍兵士が
倒れている。
顔色を窺うと「もう限界です。早く何か
食べさせて」と皆が訴えている。
だけど、「郷に入れば郷に従う」
しかないじゃないか。


・・・・・・『 アルプスの小川 』 セルビア人と酒を飲んだら日本人壊滅 より・・



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