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小林真一の作品を拾い読み きらめく星座社★ 2008年05月

小林真一の作品を拾い読み きらめく星座社★

こんにちは。 神戸から生まれた出版社、『きらめく星座社』です。 私たちが送りだす、小林真一・著の作品を、少しずつご紹介していきます。

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【 『炎の商社マン』 第一章より 】

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『 炎の商社マン(上) 第1章 』より・・・・・・・


昭和44年(1969)1月のある昼下がり、一人の男が大阪中之島にある中央公会堂の階段に腰をおろし、長い間座り込んでいた。

1月にしては暖かい日ではあったが、それでもオーバー・コートを着ることもなく、頭を深々と下げた格好で身動きもしないのは異常な光景といえた。

ホームレスにしては、身だしなみが良すぎるその男、高木源一郎は、名門商社トーセンのハンブルグ支店長兼欧州繊維部長という要職にあった。そんな立派な肩書きを持つ男が、なにゆえに冬空の下、オフイス街を離れた場所に、オーバー・コートもなく座り込んでいなきゃならんのか、当の高木自身がサッパリ分かっていなかった。
「まる光さんまでが・・・・・」と、高木がつぶやくのを場所柄耳にする者は誰もいない。

ようやく顔をあげた高木の両目は充血していて、まだ涙の跡が光って見える。いい中年の男がひとしきり泣いたものとみえた。顔には深いシワが何本も刻まれ、苦渋のさまがより際立っていた。

中央公会堂前の広場のかなたに、木村長門守重成殉忠の碑が建っている。ふと我にかえった高木が、自身のあり様を不審げに辺りを見回したとき、目に飛び込んできたのが、この碑であったが、はて木村長門守ってのは何者だったかそんなことは今の高木にとっては、どうでもよいことであった。

「オレはどうして、こんな所に居るんだろう」。
ぶるっと震えた高木は、あらためて自分がオーバー・コートを着用していないことに気づき、頼りにしていた光柳専務から、「今はお前のことなんぞに関わりあってる暇はない。出て行ってくれ」と、冷たく言い放たれてそのまま会社を飛び出し、足の赴くままに堺筋を北上して、中之島公園にまで夢中でやってきた、自分の足取りを反芻していた。

「すべては、あん畜生のせいだ。とんでもない疫病神を抱えこんだものだ」。
「それにしてもトーセンも変わってしまった。合成繊維の連中がいつの間にあんなに鼻息が荒くなったんだろう。それにひきかえ綿糸布部門の沈滞ぶりは情けないほどだ」。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『 炎の商社マン(上) 第1章 』より・・・・・・・


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【 『 はぐれ狼が奔る』 俺が辞めたらいいんだろう より 】

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・・・・・・・・『 はぐれ狼が奔る 【俺が辞めたらいいんだろう】 』 (P9~P11)より・・・


牧山春彦は突然会社を辞めた。
辞表を書いたわけじゃない。書きたくても辺りには手頃な用紙も筆も無かった。目の前のテーブルにあるのは、ウイスキーのボトルと水差し、いい加減な「おつまみ」の皿と幾つかのグラス。夜の蝶とは呼べない蛾に似た女たちと三人の中年男。
「ボクが辞めればいいんでしょう」。そう叫んだ春彦自身が、自分がいま何を言っているのかの意識が無かった。春彦の正面に座っていた野川の顔が歪んで見えた。同席していた宮崎と藤原からニヤケ面が消え、ポカ~ンとした間抜け顔に変貌した。
嬌声を上げていた女たちが、時刻が止まったように黙りこくった。沈黙を破ったのは野川だった。予想もしなかった春彦の宣言に一瞬驚きのあまり我を失ったが、日本の大手商社の一角をしめる世紀物産の常務取締役の肩書を持つ自分が、今どう対処すべきなのか、その立場を思い出したようだった。
「なんてことを言い出すんだ。今の俺が会社と社員との板挟みでどれだけ苦しんでいるか、それを一番理解してくれるのが牧山、お前だと思えばこそ帰国を急がせた。繊維部門を統括する俺の片腕にとウイーンで活躍中のお前を、あえて指名したんだ。その俺の思いが分らんのか」
「わかりませんねぇ~、それなら何故ここに、この二人が居るんですか。こいつらこそが会社を苦境に追い込んだ害虫でしょうが。この場が本当にボクの慰労のための席だとしたら、害虫二匹をなぜ呼んだんです」
女たちの眼前で害虫呼ばわりをされた宮崎が青ざめ、藤原の方は逆に顔を真っ赤に染めていきりたった。
「なんだとぅ~、害虫とはなんて言い草だ」
「そのものズバリだろうが、お前がハンブルグで行った悪行の数々、ようも今日までクビにならずに済んだことだな。常務、こいつを駆除せよと言われるのならお受けしましょう。なんでこんな害虫どもが、今回の肩たたきから免れて、ただ五〇才を越えてラインから外れているという理由だけの理由で、七人もの先輩をボクが首切り浅右衛門の役を果たさねばならんのです。いつから世紀物産はそんな薄情な会社に成り下がったんですか。あの竹下の馬鹿が社長になってからとは知っています。野川さん、貴方までが竹下の言うなりになるとはねぇ~。世紀物産ももう終りですなぁ~。そんなに首切りせなあかんほど会社が傾いたんなら、ボクも余計なもんでしょうから、真っ先に辞めようじゃないですかと、そう言ってるだけじゃないですか。どこか可笑しいとこありますか」
ここは北新地の本通りじゃないにせよ、堂島上通りにあるクラブ「以志原」である。満席にはほど遠いにせよ、四組ほどのグループ客も入り、声のよく通る春彦の怒りにまかせたぶちまけを、他所のトラブルは蜜の味と言わんばかりに、興味深かげに耳をすましている。



・・・・・・・・『 はぐれ狼が奔る 【俺が辞めたらいいんだろう】 』 (P9~P11)より・・・

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【 『 はぐれ狼が奔る 』 人事開発室という名の牢獄 より 】

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・・・・・・・・・・・・『 はぐれ狼が奔る 』 人事開発室という名の牢獄 より・・・



「お前、そこで何をウロウロしてる」

「いや、この辺りに面白い店があると聞いて・・・」

「日本の駐在員か」

「そうだ」

「いつもは、何処へ行く」

「レーパーバーンだ」

「お座なりでつまらんだろう」

「その通り、もう飽き飽きした」

「ようし、分った。お前はいいヤツのようだ」

で、例の隠し窓のドアを開けさせ、黒人の仕切り女に「オレのダチだ。大事に扱え」と紹介してくれたのだった。

「これはという来客だけ案内しました。黒田さんを入れて十人ぐらいだけですよ。しかし黒田さん、よくやるよなぁ」

「もう言うなって」

黒田とはそんな仲であった。


・・・・・・・・・・・・『 はぐれ狼が奔る 』 人事開発室という名の牢獄 より・・・

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