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小林真一の作品を拾い読み きらめく星座社★ 2008年03月

小林真一の作品を拾い読み きらめく星座社★

こんにちは。 神戸から生まれた出版社、『きらめく星座社』です。 私たちが送りだす、小林真一・著の作品を、少しずつご紹介していきます。

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【 『 アルプスの小川 』 ドレスデンのエルベ観光船 より 】

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・・・・・・・・・・・・・『 アルプスの小川 』 ドレスデンのエルベ観光船 より・・・

一通り見るべきものを見ては感嘆し、
宮殿を後にする直前の一期一会。

宮殿のどこかを修理でもしていたのであろうか、作業服姿の二人の青年がやってきて、エルベを見下ろすベンチに腰掛けて弁当を広げだした。

眼が合った。

何か物言いたげな、やさしい眼を彼らはしていた。ボク等は日本から持参のカリントウの袋を開けた
ところだった。

「日本の駄菓子の味を試してみるかい」

とボクは声を掛け、袋の中身を彼等の手のひらに移してやった。
彼らはしげしげとカリントウを眺めてから味わい、

「美味い、美味い」

と口々に言った。ボク等はまだ封を切っていない「草加煎餅」の袋を持っていた。「そうだ、この方が
良いかもしれない。こいつはビールにすごく合うんだ。仕事が終わってから一杯やる時の楽しみにな」と袋ごと進呈した。

「これは何で出来てるんです?」

「米だよ。日本人の主食が米だって知ってるだろう」

そんな会話を交わしているうちに、船の時間が来てボク等は別れた。

船着き場までは歩いて五分ぐらい。
下船する人が多く十分ばかし待たされた。やがて船は下流のドレスデンに向けて出航し、しばらく
して先ほどのベンチにさしかかった。
なんと二人の青年は立ち上がり両手を振ってボクたちを見送ってくれていた。

激しく感動した。

彼等はおそらく生涯で初めての日本人に出会い、食べたことのない妙なモノを与えられ、ほんの短い時間をしゃべり、お互いに名乗りもせず、ただそれだけの相手に手を振って別れを告げる。

涙が出た。

彼等とは永遠に再会することは無いだろう。



・・・・・・・・・・・・・『 アルプスの小川 』 ドレスデンのエルベ観光船 より・・・



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【 『はぐれ狼が奔る』 手痛い出資金詐欺に より 】

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・・・・・・・・・・・・・・・・・『 はぐれ狼が奔る 』 手痛い出資金詐欺に より・・・

「これは山川がつるんでるな」
と石田が言う。

「キミとの共同出資も、最初から取り込み詐欺のつもりだったんだろうな。こんな筋書きは
沖原には出来すぎだ。裏で操ったのは山川幸助だろう。手形屋に入れた担保は、ありゃ沖原本人の物じゃない。奥さんの実家がやっていたメリヤス工場の後を宅地にして、沖原のために実家の親父さんが建てた家だ。たぶん奥さんも知らんうちに沖原が持ち出したんだろう。あいつも罪なことするなぁ~」

しばらく経って、山川から電話があった。

「山川さん? どちらの?」

「おい、ええ加減にせえよ、そないに大勢の山川と付き合いあるんか」
と凄む。

「なんや高槻の不良か、沖原どこに匿うてんのや」

「何を、お前誰に向かってモノ言うとんねん」

「だから高槻のワルによ。今から府警本部に連絡取って、お前んとこ家捜しさせたろか」

牧山が府警本部の警視正と付き合いがあることを山川は思い出したようだった。

「パスポート返したれや」

「それ見ろ、お前が黒幕だってこと、今認めたな」

電話が切れた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・『 はぐれ狼が奔る 』 手痛い出資金詐欺に より・・・


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【 『炎の商社マン』 下巻より 】

炎(下)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『 炎の商社マン 』 下巻 より・・・・・・・


「稟議書ですか。そんなもん書きませんよ」

「第一、ボクは今までにも稟議書なんて書いたこと一度もありませんけれど。いい加減、勝手に新分野を開拓させてもらいましたが。あの稟議制度やめたらどうですか。関係ない連中にまで、いたずらに案件を知らせるだけの代物で、百害あって一利もありません。お互いリスクのなすりつけ合いのためのハンコ取りですから」

「お前、今まで稟議書書いたことないって、それ本当か。ようも勝手にいろんなこと、誰の承認印も
無しにやってきたな」

「そのかなりの部分が、部長いや違った、専務の管轄下での仕事でしたけど。専務はボクが廻した稟議書なんてご覧になったことないでしょう」

「う~む、社内規定違反行為の常習者だったか」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『 炎の商社マン 』 下巻 より・・・・・・・

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【 『アルプスの小川』 オーストリアの館より 】

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『 アルプスの小川 』 オーストリアの館 より・・・



今は亡きヘルベルト・フォン・カラヤンが、最後の日本公演のために来阪したのが、八八年の初夏だったと記憶する。シンフォニーホール二階の、右手ベランダ席で、指揮者の横顔がよく見える席だった。

曲目は「展覧会の絵」と「ボレロ」。

ボクはそれまで、ムソルグスキーという作曲家を、さして好きではなかったのだが、一人では歩くこともままならぬ身体で、懸命にタクトを振るカラヤンの指揮のもと、実際に展覧会の場に居あわせて、次々と素晴らしい絵画が目の前に展開されると思える、演奏に感動したことを、まるで昨日のことのように、鮮明に記憶している。

カラヤンとは、これで永遠の別れとなることを、観衆のすべてが知っていて、だから演奏を終えたカラヤンへの、嵐のような拍手はいつまでも鳴り止まず、カラヤンもまた、それに応えて、不自由な身体を人の肩を借りながら、何度も何度もアンコールへの返礼に姿を現わしたのだった。

大勢が花束を抱えて、カラヤンの元に殺到した。

あれは素晴らしいシーンだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『 アルプスの小川 』 オーストリアの館 より・・・



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【 『はぐれ狼が奔る』 トカゲの尻尾切り より 】

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『 はぐれ狼が奔る 』 トカゲの尻尾切り より・・・


「週刊誌だとっ」

「それが分っていて、なぜ止めない。なんのために、繊維担当から引上げて、専務昇格含みで人事担当にしたのか意味がないじゃないか。今の牧山は我を忘れている。まさに群から離れた狼だ。中川や大沢に噛み付くのはまだしも、かつての直属の上司にまで噛み付くほど、常軌を忘れたわけ
じゃあるまい。何だったらキミだけじゃなく、オレも参加して牧山の慰労をやると伝えて、週刊四季
の方は断らせろ。社長直々の慰労会が入ったからといえば、先方もキャンセル仕方なしと納得するんじゃないか」

ここらの展開まで、牧山は読んでいた。

野川が苦渋に充ちた顔で、竹下の意向を伝えたところ、意外にも牧山は応じたのである。

「なんだ、さっきまで先約ありと強硬だったじゃないか」

「強硬を貫いた方がいいのなら、そうしますが」

「いや、そりゃ困る」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『 はぐれ狼が奔る 』 トカゲの尻尾切り より・・・



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【 炎の商社マン 】

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『 炎の商社マン 』 上巻 より・・・・・・・



コースは知多半島にある。

試し打ちの結果は上々で、両名共に左右のブレがなく、打球の距離も30ヤードほども伸びたと思えた。当然両名ともご機嫌が良い。

昼食時にビールの小瓶を一本づつ飲んで、更に機嫌の良くなった東山が、イン10番のティから、キャディが「もう少し待ってください」と制止するのを

「もういいだろう、そんなには飛ばんよ」

と打ったショットが気持ちよく伸びて、フェアウエイ中央に飛び、そのままランも伸びて、前を行く4人組の歩む前までも転がっていった。

これは「打ち込み」といって、ゴルファーとしては、厳に戒めねばならぬマナー違反である。
青くなった頭取に代わり、常村が走り、精密機械メーカーの田村専務も走って、前の組に追いつき、平謝りに謝った。

相手の紳士の中の一人が、謝る二人を無視し、遅れてくる東山が頭を下げるのに、ニコヤカに
応じて右手の平を大きく開き示した。

東山も後の3人も、紳士が了解の合図をしたものと思い安堵したのだったが・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『 炎の商社マン 』 上巻 より・・・・・・・




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